クリス・ブリュンガー氏の想い

写真:ブリュンガー氏

近藤正晃ジェームス: 昨年11月、吉田茂が首相官邸で会館設立資金集めのための茶話会を開催してから70年の記念すべき日に、クリスさんから多額のご寄付をいただきました。

クリス・ブリュンガー氏: 昨年4月に届いたパンフレットの表紙を見て、「おや?ずっと冬眠状態だったアイハウス(以後、会館)が動き出した!」とワクワクしました。その取り組みに自分も貢献したいと思ったのが寄付のきっかけです。

近藤: ありがとうございます。寄付の使途を図書室とご指定いただきましたが、何か具体的な構想などおありでしょうか?

ブリュンガー氏: 物理的な図書館ではなく「最先端の情報基地」への刷新をイメージしています。

近藤: 情報基地という意味では、会館がいま強化しているのは、情報の分析と発信です。そのための人的・物的投資はまさしく現在進行中です。また大戦開始から戦後にかけての歴史の貴重なアーカイブ保存は、二度と戦争を起こさないためにも、会館以外の国際交流団体も交え研究し、次世代に残すべき大切な資料だと考えています。

ブリュンガー氏: 大いに賛成です。私の母は、当時ドイツ領で、現ポーランドのグダニスク(当時はドイツ語表記でダンツィヒ)近くにあったポメラニアの出身です。第二次世界大戦時、母方の家族は難民に、父親は目が見えなくなり、二人の伯父が戦死しました。子どもの時に日本へ行きたいと思った理由の一つは、恐ろしく悲惨な戦争からただただ逃げ出したいと思っていたことがあります。ただし、自分はドイツ人として、引き起こした大戦ということも忘れずに、いま自分が平和のためにできることは何かを考え実行することが大切だと思っています。会館は、今こそアジア、隣国に目を向けて対話、人材交流、次世代をリードする人材育成の場を築くべきだと思います。

近藤: 人材育成という意味では、現在研究者2名をイギリスの提携先シンクタンクに派遣中ですが、次世代の人材交流をアジアに展開することも肝要です。

ブリュンガー氏: 欧州は戦後70年以上経て平和構築が進んで一安心していました。しかしそれは脆くも崩れ、昨年ウクライナ戦争が始まりました。地続きで緊張関係のある国に囲まれたドイツの人間として、日本も他人事ではないと申し上げたい。いま日本は欧州同様に危険な状態です。島国だがロシアや中国、朝鮮半島など、隣接する地域との緊張が明らかに高まっています。ですから今こそ隣国との対話の場を作るべきで、会館はそれができるはずです。近藤さんの会館理事長就任の契機が、ベルリンの友人に「早く日本に帰国して平和構築に取り掛かった方がよい」とのアドバイスがあったから、という逸話を聞いたことがありますが、それには共鳴し感動しました。

近藤: 創立記念募金活動の活用先として、会員に開かれた知的交流スペースの構築や、会員同士が協働できる要素として、会館がこれまで培ってきたプログラム4象限のうち、特に文化芸術部門の強化を掲げています。隣国との対話も政治経済だけでなく、国際文化会館ならではの分野でも築いていければと考えています。

ブリュンガー氏: 素晴らしいですね。具体的には、韓国との人材交流を支援したいと思います。特に女性を意識的に派遣してはどうでしょうか?40年にわたり日本の医学・製薬業界に携わる中で、優秀な日本人女性と出会う機会を数多く得ました。

近藤: ありがとうございます。会館では70周年募金活動の進展を会員の皆さまに報告し、クリスさんのようにご寄付に至った思いやアイデアも頂戴したいと考えております。

ブリュンガー氏: 新しい会館のイメージとして、鎖国時代の出島のような機能はヒントになると思います。1823年に来日し、長崎にあるオランダ商館付となったドイツ人医師フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトは、日本人との交流を円滑にする為に、ピアノと沢山のお酒を持参して、歌って(現代版カラオケですね!)、本音で語り合う対話の場を作りました。新しく作る施設プランの中に、平和のための国を超えた対話の場として交流スペースを検討するのは大切なことだと思います。

近藤: 出島の歴史的背景にインスピレーションを得て、平和への架け橋となる国際対話の場を創出する施設を検討することは素晴らしいアイデアですね。クリスさんの豊富な経験とアイデアは、会館の未来を拓くために大変貴重です。今後とも、ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

写真:ブリュンガー氏

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会館が「かけがえのない場」であり続け、新たな時代を切り拓くプログラムを展開し続けるためには、皆様のご支援が不可欠です。「港区版ふるさと納税」を通じて国際文化会館にご寄付いただくと、所得税の還付や住民税の控除を受けることができます。ぜひ本制度を通じてお力添えをいただきたく、ご協力をお願い申し上げます。

 

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