吉川 洋 著(Charles H. Stewart訳)
増補改訂版/2008年/268ページ/ハードカバー
ISBN 978-4-903452-12-8
原著『転換期の日本経済』(岩波書店、1999年)
第1回吉野作造賞
定価 3,086円/優待価格 *2,160円(税込)
*優待価格は国際文化会館会員の方に適用されます。
不良債権の処理が進まぬまま円安、株安が進行し、金融恐慌の危機に見舞われた1990年代の日本経済の状況を徹底的に検証。不況の真因が拙劣な経済政策にあることを明らかにする。その上で、ビッグバンに突入する金融システム、金融行政について明確な指針を提示し、経済立て直しのための方策を処方。あるべき経済政策の姿を提言する。
本書の初版は2001年であるが、著者の吉川洋教授は、2000年末に内閣府の経済財政諮問会議議員に任命され、2001年から2006年まで小泉政権のもとで民間議員を務めた。その間、日本のマクロ経済政策の策定に深く携わり、デフレーション、不良債権、ゼロ金利、赤字国債等、数々の経済的難題に直面し、「失われた十年」の後半とその終息を民間議員として間近に見届けた。この体験から、2008年の時点から「日本の失われた十年」を再度検証し、新たに第八章を追加し、さらに全編にわたって改訂を施し新版としたものである。
本書序文で著者は、「私は自らの経験から主流のミクロ的基礎を持つマクロ経済学があまり役に立たないことを確信した。例えば、第八章で、大量のマネーサプライによるインフレターゲティングがなぜ『不確実性の罠』に嵌った経済状況下では多くのエコノミストが期待しているほど有効ではないかを説明した」と述べている。日本の失われた十年は、歴史的事件であり、多くの未解決の問題を残し、今なお多くのエコノミストにとっての課題である。著者は、本書がエコノミストばかりでなく、さまざまな分野の読者に、日本経済の過去と将来に対する興味を喚起するものとなることを願っている。
本書への推薦文
——ニューヨーク大学C.V. Starr経済学名誉教授 佐藤隆三