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- 講師: 石黒 浩(ロボット学者/大阪大学教授(特別教授))
- 日時: 2015年11月13日(金) 0:15~1:30 pm
- 会場: 国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
- 用語: 日本語(通訳なし)
- 会費: 一般:1,000円、学生:500円(学生証をご提示ください)、国際文化会館会員:無料
- ※昼食は含まれておりませんので、各自レクチャー前後にお済ませください。
- 定員: 200名 (要予約)
略歴:石黒 浩(ロボット学者/大阪大学教授(特別教授))
レポート
アンドロイド研究の第一人者として、世界的に注目を集めている石黒浩教授。意外にも、ロボットにこだわりがあるわけではないと言う。根っこにあるのは、幼少期に親や先生から「人の気持ちを考えなさい」と言われた経験。人の気持ちって何だろう?考えるってどういうこと?――自分自身、そして人間を知りたいというあくなき探究心が、世界最先端のロボット研究へとつながっている。
アイハウスでの講演は、技術によって加速した人間の進化に始まり、「真の人間らしさとは何か?」、さらに「なぜ地球上に有機物が生まれたのか?」という根源的な問いに迫る内容となった。
◆ロボット社会の到来へ
石黒教授が開発を手掛けた「マツコロイド」やソフトバンクが開発した「Pepper(ペッパー)」などの登場で、再びブームとなっている人型ロボット。果たしてこうしたロボットが人間社会で活躍する時代は来るのだろうか。
「多少気持ちの悪いことでも、便利なら人は案外受け入れるもの。それは人型ロボットも同じです。ロボット社会はそう遠くない未来にやってくる」と石黒教授。実際に“話す家電”やスマートフォン、クレジットカードなど、開発当初は人々が抵抗を感じた新技術も、今では当たり前のように使われている。
近年のロボットブームを支えているのは、インターネットやスマホの普及、そして通信や音声・画像認識技術の飛躍的な進展だ。今後、さらに人ときちんと関わることのできるロボットが10~20万円程度で市場に出回るようになれば、ゲームや学習教材に始まり、駅やデパート、病院、高齢者施設などでの活用が見込まれると話す石黒教授。中でも対話を必要とする語学学習や、ロボットによる商品の販売などは、最適なアプリケーションになると言う。
◆人間らしさとは何か
ロボットが人らしくなる一方、人の体もロボットに近づいている。人間は自らの遺伝子の進化だけでなく、技術によって加速的・飛躍的な進化を遂げてきた。「例えば、自動車や飛行機、携帯電話などは明らかに人間の能力を拡張させたもの」。そのスピードは遺伝子の進化よりも格段に速い。
では、技術はどこまで人間の本質を再構成することができるのだろうか。義手・義足を使用している人を見て、人間らしくないと感じる人はほとんどいないだろう。もし肉体が人間にとって絶対必要条件でないならば、人間のすべてを機械に置き換えることは可能だろうか――。
「僕の答えはイエスです」と石黒教授。これまでの技術革新の速さを考えれば、数千年、数万年後には脳もすべてコンピュータに置き換えられるという予測は決して間違っていないと言う。「現に日々の活動において、人間は今や9割くらいの機能を機械や人工物に頼っていて、ほとんど生身の機能を使っていないのではないでしょうか。皆さんは自動車やパソコン、スマホ、メガネなしに生きられますか?」
◆人間は無機物に戻る?
技術による能力の拡張に伴い、人間はいわば動物的部分を縮小し続けている。それが人類の進化だとすれば「言い過ぎかもしれないが、人はアンドロイドになるために生まれてきたのではないかとさえ思える」と石黒教授。将来的にブレイン・アップローディング(脳の活動をコンピュータに移植すること)などの技術によって、生命の限界を超える進化がもたらされれば、人間の中から有機物(=肉体)がすべて消え去り、人は無機物に戻る、というのが石黒教授の仮説だ。「永遠に生きる無機物の知的生命体になることが、人間の使命なのかもしれない」という大胆な見解には、オーディエンスもさまざまな反応をうかがわせた。
では、そもそもなぜ地球上に有機物が出現したのか?この根源的な問いに対して石黒教授は、地球が加速的に進化を遂げるために、有機物という仮の手段を使ったにすぎないのではないかとの考えを語った。「なぜ地球上に有機物が現れたのか――ロボットの研究の果てにその答えがあるのかもしれない」。