※本イベントは終了いたしました。下記より講演録をご覧いただけます。
今年は、日本が生んだ世界的歴史学者である朝河貫一博士が亡くなられて70年目にあたります。朝河博士は歴史学者としてはもとより、国際政治学者として、また平和を希求する愛国者・憂国の士として多大なる貢献をされました。
日露戦争に際しては、『日露衝突』(1904年)を著し、開戦に至る国際関係の歴史的経緯を明らかにしつつ、清国の中立と韓国の保全に対する日本の立場を明確に主張して、英米の共感と支援を受けました。しかし日露戦争に勝利した後の日本は、東洋政策の根本としていた中国の領土保全と列国の機会均等の二大原則を反古にして大陸への進出を進めます。朝河博士はその状況を憂い、『日本の禍機』(1909年)を著して日本の外交を批判し、その後、開戦直前には米国大統領から天皇への親書の草案作成に関わるなど、戦争阻止に心血を注ぎました。開戦となってしまった後は、奈良や京都など日本の文化遺産や文化財を空爆から守るために米国の専門家による保護リスト作成に協力したともいわれています。
こうした朝河博士の、戦争という狂気に立ち向かい、広い知識と深い洞察力そして高い志に基づく勇気ある行動をとった軌跡を辿るとき、博士の生涯は私たちに多くのことを教えてくれます。
昨今、世界では反グローバルの自国中心主義の動きが拡散し、貧富の格差拡大や国民分断がさらに進み、各国の思惑も複雑に絡み合って、世界は混迷を深めつつあります。
朝河博士は今の世界や日本をどうご覧になるのか。我々にどのような指針を与えてくださるのか。また、今後を担う若い人々に何を繫いでいくべきなのか。下記の通りシンポジウムを開催し考えます。
【プログラム】
総合司会:植木千可子(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授)
主催者挨拶:明石 康(国際文化会館理事長)
「朝河貫一の生き様」について
登壇者:
矢吹 晋(横浜市立大学名誉教授)
濱田宏一(イェール大学名誉教授)
ダニエル・ボッツマン(イェール大学教授)
山内晴子(早稲田大学アジア太平洋研究センター、元特別センター員、朝河貫一研究会理事)
基調講演
高原明生(東京大学大学院教授)
フランシス・マコール・ローゼンブルス(イェール大学教授)
加藤良三(元駐米大使)
パネル・ディスカッション
第一部「今、なぜ朝河貫一か」
司会者:船橋洋一(アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長)
ディスカッサント:
玄葉光一郎(衆議院議員、元外務大臣)
黒川 清(東京大学名誉教授)
田中明彦(政策研究大学院大学学長)
第二部「新しい太平洋時代――次世代に繋ぐ希望」
司会者:渡部恒雄(笹川平和財団上席研究員)
ディスカッサント:
阿川尚之(慶應義塾大学名誉教授)
瀬口清之(キヤノングローバル 戦略研究所研究主幹)
秋田浩之(日本経済新聞社編集局コメンテーター)