2018年度IHJ芸術プログラム アートプログラム/コンサート

【IHJアーティスト・フォーラム】アーティスト・トーク
『For Example』

  • 2019年1月17日(木)7:00 pm
  • 会場: 国際文化会館 講堂
  • アーティスト: ジェシー・シュレシンジャー
    (美術作家、日米芸術家交換プログラムフェロー)
  • 用語: 英語 (逐次通訳つき)
  • 共催: 日米友好基金 (JUSFC)
  • 参加費: 無料 (要予約)

大工の父を持ち、木工や建築に親しんで育ったビジュアル・アーティストのジェシー・シュレシンジャーは、日本各地で様々な分野のクラフトに出会いました。北海道ではコキア クラフトデザインラボラトリィと樹の郷AKOの木工、長野ではStudio Prepaの吹きガラス、東京ではミナ・ペルホネンのテキスタイル、京都では茶楼Farmoonのシェフ船越雅代の料理と有機農園、鹿児島ではDwellの金工及び木工などです。シュレシンジャーはこれらの出会いから、職人技の素材を使った小さな彫刻作品を作成し、2019年1月には一連の作品を、旅の間に収集したオブジェや撮影した35ミリ写真のスライドとともに、東京のキュレーターズ・キューブで展示する予定です。
今回のアーティスト・トークでは、それぞれの地域での経験や、今回制作した作品について、お話しいただきます。

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ジェシー・シュレシンジャー:
彫刻やドローイング、タイムベースドパフォーマンス、写真といった分野をまたいで活動するビジュアル・アーティスト。シュレシンジャーは素材や場所の空間的なダイナミズム、歴史背景、構造上の意図や関わり、巡らした思索、見る者の体験といったそれぞれに固有な性質を掘り下げることで、ものの成り立つ過程自体に価値を見出している。シュレシンジャーの彫刻やサイトスペシフィック・インスタレーションといった作品群は主にその場所に由来する、もしくは場所の歴史的側面に由来する木、石、繊維、鉄、漆喰やその他拾い集めた素材などを活かして作られる。大工の父の影響で伝統的な職人技に関心が高く、また小さな有機農園に関わってきた経験も、彼の作品の哲学や倫理観に大きな影響を与えている。

jesseschlesinger.com


撮影:Graham Holoch

【IHJアーティスト・フォーラム】ダンス・パフォーマンス&トーク
『BUSCARTE – あなたを探して』

  • 日時: 2018年12月11日(火)7:00 pm
  • 会場: 国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
  • 作、出演:ナカ・ダンスシアター(ホセ・ナバレテ [日米芸術家交換プログラムフェロー]、デビー・カジヤマ)
    ボイス・プログラミング/加工・作曲:アドリア・オッテ(作曲家、サウンド・デザイナー)
    追加音楽:リリアナ・フェリペ
    音響操作:宮本貴史
    テキスト翻訳:シノブ・カワシマ
    手話通訳:菊川れん、江副悟史、高木真知子、角田麻里

  • 用語: 英語・日本語 (パフォーマンスは日本手話通訳つき、トークは逐次通訳つき)
  • 共催: 日米友好基金 (JUSFC)
  • 参加費: 無料 (要予約)

2014年メキシコのゲレーロ州で、43名が拉致されたイグアラ市学生集団失踪事件。その後の捜査の過程で、ほかにも集団埋葬された遺体がみつかり、メキシコにまん延する隠れた暴力の存在が明らかになりました。

『BUSCARTE (あなたを探して)』は、この事件の法医人類学的調査結果に想を得て、そのトラウマが社会に与えた影響を検証したダンス作品です。哀しみを歌い、ダンスで昇華し、「心と体」の動きで織り成す本作は、真実と虚構、試行錯誤と事実検証から、目には見えないものの可視化を試みます。作曲・サウンドデザインにはアドリア・オッテを迎え、ボイス・プログラミングとプロセッシング・テクノロジーを駆使した没入型サウンドスケープを使用しました。

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ナカ・ダンスシアター:
2001年設立。儀礼やカルチュラル・スタディー、現代の社会政治や環境問題を扱い、分野を超えてダンス作品を手掛ける。コミュニティと密な関係を築き、踊りや語り、マルチメディア、サイトスペシフィックな環境を通して、コミュニティや市井の歴史、民話、経験を表現し、分かりやすいパフォーマンスで、観客が社会的正義についてクリティカルに考えられる作品づくりを目指している。多様なコミュニティの住民を呼び集め、信頼感を育みながら、相互の対話や参加を促している。

nakadancetheater.com

ホセ・ナバレテ:
メキシコ市生まれ。UCバークレー大学にて人類学を学んだ後、ミルズカレッジにてダンスでM.F.A修士を取得。サラ・シェルトン・マンにダンスを、ナカガワ・ヒロユキに太鼓を、ノラ・ディンツェルバッハーにアルゼンチン・タンゴを師事する。ザ・ヤードのベッシー・シェーンベルグ・レジデンシー、ジェラッシ・レジデンシー、ジェス・カーティスのCHIME Mentorship、ラルフ・レモンとCHIME Across Borders fellowshipを獲得。メキシコの高校・大学やYerba Buena Center for the Artsでパフォーマンスを教えてきた。現在オークランドの Eastside Arts Alliance で、芸術と社会正義が交錯する場所で有色人種のアーティストが活動するためのレジデンシーやショーケースを展開するLive Arts in Resistance (LAIR)をキュレーションしている。

デビー・カジヤマ:
カルチュラル・スタディーと社会的正義、パフォーマンスの交わるところに興味を持っている。師事したジミ・ナカガワ、ノラ・ディンツェルバッハーや、キラ・キルシュ、サラ・シャルトン・マン、ニタ・リトルのムーブメント・リサーチ、オークランドのEastSide Arts Allianceのスザンヌ・タケハラやカルチュラル・ワーカーたちの情熱に影響を受けている。2001年からナカ・ダンスシアターで6本の長編と多くの短編を手掛け、国内外で上演した。またDandelion Dancetheater、Dance Brigade、Rosy Simas Danse、Somei Yoshino Taiko Ensembleにも出演している。Djerassi Resident Artists Programでレジデンシー、Montalvo’s Lucas Artists Residency ProgramのIrvine Fellow、またACTA Apprenticeship を受けて、ジミ・ナカガワに太鼓を師事した。

アドリア・オッテ:
作曲家、マルチ・プレーヤー、サウンド・デザイナー。音楽のキャリアはクラシック・バイオリンから始まったが、ロックバンドでのエレキギター、フリーインプロ、電子及び伝統的韓国太鼓へと発展し、現在はそれら全てを統合している。ミルズカレッジで電子音楽と録音メディアのMFAを取得、ダンスや演劇、ビデオのためのサウンド・デザインや、OMMOというエレクトロアコースティック音楽のデュオとして活躍している。


撮影:Scott Tsuchitani

【IHJアーティスト・フォーラム】アーティスト・トーク
『Work/ Not Work-境界をひきなおすMODUスタジオの建築』

  • 2018年7月2日(月)7:00 pm
  • 会場: 国際文化会館 講堂
  • アーティスト: フー・ホアン&ラチェリー・ローテム
    (建築家、日米芸術家交換プログラムフェロー)
  • 用語: 英語 (字幕/逐次通訳つき)
  • 共催: 日米友好基金 (JUSFC)
  • 会費: 無料 (要予約)

NYを拠点に世界で活躍する建築スタジオMODUのホアンとローテムが、彼らの革新的な建築作品を紹介。天気の変わりやすさを生かし、その場の持つ、環境的・社会的ポテンシャルに注目したインタラクティブな空間を生み出しています。

フー・ホアン & ラチェリー・ローテム (MODU):
フー・ホアンとラチェリー・ローテムは、ニューヨークを拠点に、超分野的建築スタジオMODUを共同運営し、人と環境を繋ぐ設計に取り組んでいる。これまでに、Design Museum Holon、Creative Time、Art Basel Miami Beach、Duggal Visual Solutionsを設計したほか、多くの個人宅も手掛けてきた。ニューヨーク、マイアミ、北京、テルアビブ、シドニーなどで数々のプロジェクトを行い、Architectural League of New York (2009) 、北京建築ビエンナーレ(2013)、アメリカ建築家協会 (2016)、American Academy in Rome (2017)などで受賞およびコンペ入賞を果たしている。また、コロンビア大学、プラット・インスティチュート、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン、マサチューセッツ工科大学などで、教べんをとり研究活動を行い、建築と天気の関係に関するリサーチでは、2012年にニューヨーク州の芸術カウンシルより、2013年にはロバート・ラウシェンバーグ財団より助成を受けている。

moduarchitecture.com


左上:2015 『Playgarden: Courtyard with Classrooms That Open Onto It』
右上:2010 『Exhale: Public Dance Performance』
下:2015 『Cloud Seeding: 30,000 Balls Made from Recycled Plastic』

【IHJアーティスト・フォーラム】アーティスト・トーク
『Kyokai』を拡げる—神山AIR』

  • 2018年5月30日(水)7:00 pm
  • 会場: 国際文化会館 地下 ルーム3
  • アーティスト: クウィン・ヴァンツー
    (建築家、日米芸術家交換プログラムフェロー)
  • 用語: 英語 (通訳なし)
  • 共催: 日米友好基金 (JUSFC)
  • 会費: 無料 (要予約)

建築家・美術家として活躍するクウィン・ヴァンツー氏は、人にコミュニケーションをもたらすダイナミックな建築形態を通じて建物と空間、身体の関係を探求しています。アートと建築をまたぐその作品は、空間にまつわる実験的なもの、かつサイトスペシフィックなもので、実際に自身が訪れた場所からの影響を多分に受けています。
ヴァンツー氏が今年1月から徳島県神山町のアーティスト・イン・レジデンス(AIR)で行ってきた、建築的パブリックアート『Kyokai』の滞在制作と、レジデンシーでの体験についてお話しいたします。

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クウィン・ヴァンツー:
2001年にVirginia Polytechnic Institute and State University にて建築学士を取得。2009年にCranbrook Academy of Artより建築修士取得。国内外で多数の受賞歴あり。主なものに、Worldstudio AIGA Grant (2009年)、Stewardson Kefee LeBrun Travel Grant-AIA NY (2009–10年) 、ドイツ学術交流会奨学金(2010-11年ドイツ、ベルリン)。またアーティスト・レジデンシーも多くBemis Center for Contemporary Arts (2010年ネブラスカ州、オマハ)、Skowhegan School of Painting and Sculpture(2012年メイン州、スカウヒーガン)、McColl Center for Art and Innovation(2014年 ノースカロライナ州、シャーロット)、Kamiyama AIR (2015年日本、徳島県神山町)、Nanji – Seoul Museum of Art(2016年韓国、ソウル)など。2010年から2011年にかけて、オラファー・エリアソンのInstitut für Raumexperimenteで学ぶため、ドイツ学術交流会奨学金を取得、2012年から2013年にかけては、フルブライト奨学金を得てイギリスで学んだ。また2014年から2018年にかけてロンドン大学バートレット建築校にてPh.D取得のため、ロンドン大学奨学金、2016年にはグラハム財団の助成金を得ている。

quynhvantu.com


【IHJアーティスト・フォーラム】アーティスト・トーク
『わたしも書ける?—子供に伝える詩の魅力』

  • 2018年5月17日(木)7:00 pm
  • 会場: 国際文化会館 岩崎小彌太記念ホール
  • アーティスト: ローレル・ナカニシ
    (作家、日米芸術家交換プログラムフェロー)
  • 用語: 英語 (日本語字幕/逐次通訳付き)
  • 共催: 日米友好基金 (JUSFC)
  • 会費: 無料 (要予約)

ハワイを拠点に活躍するライターのローレル・ナカニシが、米国やニカラグアの学校で行ってきた、児童詩教育についてお話しします。子供たちが詩作を通していかに成長するか、さまざまなエピソードや調査例をまじえ、詩の教え方や生徒たちの作品も紹介いたします。最後には実際に詩を共作する簡単なエクササイズも行います。

ローレル・ナカニシ:
ハワイ州オアフ島アレワに生まれ育つ。受賞歴のあるポケットブック『Mānoa|Makai』の作者で、詩やエッセイが、『Orion』、『Gulf Coast』、『Fourth Genre』、『Black Warrior Review』、『Bayou』、『Montana Natural History Magazine』など多くの米国内の雑誌に掲載されている。フルブライト、日米友好基金・全米芸術基金、Greta Wrolstad Foundationなどからの助成歴多数。ハワイ、ニカラグア、モンタナ、マイアミで子供に詩の創作を教え、2012年にはニカラグアでコミュニティ・アートの組織NicaArtsを立ち上げた。また2015年にはフロリダ州マイアミでO, Miami Sunroom という詩のプログラムを創設し、双方とも現在も継続中。モンタナ大学で詩の修士号を、フロリダ国際大でクリエィティブ・ノンフィクションの修士号を取得。

laurelnakanishi.com


Photographs are courtesy of the artist.

イベントレポート

子供の学びや社会的成長などに大きな影響を持つ芸術教育。中でも詩は、米国の芸術教育において、演劇や美術、音楽やダンス同様、重要な役割を果たしてきた。ハワイを拠点に活動し、日米芸術家交換プログラムで来日した作家のローレル・ナカニシ氏に、児童詩教育についてお話しいただいた。講演後は会場参加型のエクザサイズも行われた。

◆詩が生徒に与える好影響とは

大学院で詩やライティングに関する修士号を取得し、米国やニカラグアで数々の詩に関する教育プログラムを立ち上げてきたローレル氏。詩の児童教育に長年携わった経験から、ローレル氏は詩が生徒に及ぼす良い影響を実感している。勤務していた学校の先生や校長先生からは「詩の授業のおかげで生徒のモチベーションが上がった」「詩の授業の後は生徒の集中力や自己表現意欲も上がる」「詩の授業は生徒の自信と自尊心を構築する手段だ」といった言葉が寄せられたという。実際、過去30年にわたる調査研究によると、芸術教育は学業成績、社会性、健康面に良い影響があることがわかっている。詩によって養われた社会性ある生活態度や行動が、教室内や学校、ひいては共同体における積極性にもつながるとローレル氏は言う。

◆詩の正解は無限にある

物事に対する感じ方は人それぞれ、表現の仕方も人それぞれだ。しかし、この事実に戸惑う生徒も多い。生徒は多くの場合、一つの正解を探すような授業に慣れきっており、無数の潜在的正解が存在する詩の授業において、自分の考えや非現実的な空想を表現する自由に最初は戸惑ってしまうとローレル氏。それらを言葉にするのに数週間かかる生徒もいたそうだ。しかし、言葉で表現することに慣れると書きたい物語や経験があふれ出るようになり、学期末までには自信を持って、自分の作品を誇れるようになった。そして、この自信やモチベーションが、ほかの学業や社会的行動にも良い影響を与えるようになったという。こういった恩恵を生徒に与えるためには指導にも技術が必要だと説くローレル氏は、ハーバード大学「プロジェクト・ゼロ」による、芸術教育の質を担保するための7つの効果的な実践法を踏まえ、オリジナルの詩の教育法を考案。その主眼は生徒の創造性や書くことの喜び、「詩で自分を自由に表現したい」という気持ちを引き出すことにあり、生徒の「創造的な声」を培うことが大切であると強調した。

◆自分の内なる「子ども」を表現しよう!

講演後の会場参加型エクササイズでは、詩の朗読や執筆、そしてローレル氏が詩人に欠かせないスキルであるという「観察眼」「五感」「想像力」を磨くクイズが行われた。詩の朗読では庭をテーマにした短い詩を取り上げた。まずは目を閉じて、自分が植物や野菜を植えた庭にいることをイメージ。身ぶり手ぶりを交えて体全体で朗読し、参加者は詩の持つリズムやダイナミズムを全身で感じた。詩の執筆では隠喩を使ってイメージを文字にする方法を探った。ローレル氏が掲げた、どんなにとっぴなイメージでも「間違いはない」と、無限の選択肢の中から「選ばなければならない」という二つのルールに基づき、五感と想像力を使って三つの色を隠喩で表現するエクササイズが行われた。ローレル氏が投げかけた「赤を音にしたら」「黄色が匂いだったら」「青が連れて行く場所とは」のテーマに、会場は真剣に筆を走らせていた。答えは各色の付箋に書き、ホワイトボードに添付して、エクササイズ後はさまざまな表現を皆で共有。まるでボード上に一つのコラボレーションポエムができあがったようだった。