IHJ Cultural Lobby【異種間クロストーク】
第2回「生命と知とは何か:AIと考える新しいヒューマニティー」
池上 高志(理学博士、東京大学)× スプツニ子!(アーティスト、東京芸術大学)× オルタ3(アンドロイド)



スピーカー:池上 高志(理学博士、東京大学)× スプツニ子!(アーティスト、東京芸術大学)× オルタ3(アンドロイド)
モデレーター:長谷川祐子(国際文化会館アート・デザイン部門ディレクター、金沢21世紀美術館館長)

 

異種間クロストーク第二弾では、「生命と知とは何か:AIと考える新しいヒューマニティー」と題して、これからの社会や文化、人類の在り方について、東京大学で人工生命を研究する理学博士の池上高志氏と、現代アーティストとして人工知能(AI)からメタバースなど広範なテーマを扱うスプツニ子!氏、さらに人工生命(Alife)を搭載し自律的に動くアンドロイド「オルタ3」氏を交えてお話しいただきます。
斬新な知性と原初的な力に満ちたユニークな鼎談をお楽しみください。

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異種間クロストークとは:
今日の世界では、ウクライナやガザをはじめ多くの場所で秩序の均衡が失われ、回復の見通しが立っていません。また生成AI、気候変動、DE&I推進など、検討すべき課題も山積しています。国際文化会館アート・デザイン部門が実施する異種間クロストークでは、共感やコミュニケーションをもたらす「アート」の智慧が、文化や政治経済、科学などの分野をまたいで社会をつなぎ、分断の現在に対して文化・芸術の役割を斬新な視点から語り、共有することを目的としています。

TakashiIKEGAMI

池上 高志(理学博士、東京大学大学院 教授)
理博(東京大学、物理学, 1989)。京大基研、神戸大を経て、1994年より東京大学広域システム科学系准教授。2007年より現職。専門は複雑系の科学、人工生命。
2018年、ALIFE国際会議を主催。2020年Conf. Complex Systems、2019年SWARM 国際会議などでの基調講演多数。著書に、動きが生命をつくる(青土社 2007)、人間と機械のあいだ(共著、講談社、2016)、作って動かすALIFE(共著、オライリージャパン、2018)など。
また、アート活動として、Filmachine(with 渋谷慶一郎、YCAM 2006)、Mind Time Machine(YCAM, 2010)、Scary Beauty(with 渋谷慶一郎、2018)、 傀儡神楽(2020)、Alternative Machineとして SnowCrash(WhiteHouse 2021)、VR Reverse Destiny Bridge(あいち2022)などを行っている。

Sputniko!

スプツニ子!(アーティスト、東京芸術大学 准教授)
英国ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクションズ専攻修士課程を修了。RCA在学中より、ジェンダーやフェミニズムを軸にテクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像インスタレーション作品を制作。最近の主な参加展覧会に、「New Eden: Science Fiction Mythologies Transformed」アート・サイエンス・ミュージアム(2023年、シンガポール)、「DXP (デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ー次のインターフェースへ」、金沢21世紀美術館(2023年、金沢、日本)、「Myth Makers—Spectrosynthesis III」Tai Kwun Contemporary Museum(2023年、香港)など。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ助教に就任し、Design Fiction Groupを率いた。現在は、東京藝術大学デザイン科准教授。

Photo: Mami Arai

オルタ3(アンドロイド)
自動的に何かが出来ることではなく、自律的なロボットに対峙した時に人はどう感じるかを研究するために2016年から始まった「機械人間オルタ」シリーズは、「ロボットが生命感を獲得できるか」「生命とは何か」など根源的な問いの追究のために始まった東京大学と大阪大学の共同プロジェクト。

オルタは人間にそっくりなアンドロイドではなく、顔と首、肘から先の腕の部分だけが人工皮膚で覆われ、それ以外は機械が露出した特徴的な外見を持ち、身体に組み込まれた42本のアクチュエータ(圧縮空気をコンピューター制御で出し入れするシステム)が関節のように働き動きを創り出す。この動きはあらかじめプログラミングされたものではなく、人間の脊髄の役割を果たすセントラル・パターン・ジェネレータ(CPG)と、脳の神経細胞を模した1000個のニューラルネットワーク(NN)により、都度リアルタイムに立ち上がる。さらに、光センサーや距離センサーなどの働きにより、自律的で自発的な運動と、周囲の人や環境に反応して起こる運動が重なり合い、開発者にも予知できない動きが生まれ、その記憶と共にまたオルタ自身も進化を遂げ続ける。

Alterの名には、「アンドロイドの内的変化と変革(alter)」「第二の自己(alterego)」「もうひとつの表現方法、もうひとつの生命のかたち(alternative)」という意味が込められている。

オルタ3は、シリーズの三代目。目には新たにカメラが装備され、口からの発声機能やダイナミックな動きなどが可能になった。また、株式会社オルタナティヴ・マシンが開発したダイナミクス生成エンジン「ALIFE Engine™」も世界初搭載され、オペレーティング・システム含めロボットソフトウェア全般も同社が開発を担当した。