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- 2016年5月10日(火)7:00 pm
- 会場: 岩崎小彌太記念ホール
- グレアム・コルベインズ(映画監督、日米芸術家交換プログラム・フェロー)
トークゲスト:ヴィヴィアン佐藤(美術家・映画評論家・ドラァグクイーン) - 用語: 英語・日本語(逐次通訳つき)
- 共催: 日米友好基金
- 会費: 無料 (要予約)
日本のLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど性的マイノリティー)界に影響を与えた人物を取材し、映画をはじめ書籍やウェブで展開するコルベインズのドキュメンタリー企画。
昨年は渋谷区が同性カップルに「パートナーシップ証明書」を初交付するなど、LGBTQをめぐる日本の状況は日々変化しています。
温かく洞察に満ちた気鋭の米国人監督の目に、日本ならではの課題や日常はどう映るのでしょう。
現在撮影中の映画を一部上映し、美術家・映画評論家・ドラァグクイーンとして活躍するヴィヴィアン佐藤氏とのトークも行います。
- グレアム・コルベインズ ウェブサイト:grahamkolbeins.com
ワークインプログレス版に登場する方々(画像上から):松田篤史、田亀源五郎、長谷川博史、マサキチトセ、のぎすみこ、ろくでなし子、ヴィヴィアン佐藤、ほか(敬称略)
レポート
グレアム・コルベインズ監督のドキュメンタリー映画『クイアー・ジャパン プロジェクト』のワークインプログレス上映会とトークが行われ、最新の動画クリップが上映された。
クリップには、漫画家の田亀源五郎氏、編集者で日本HIV陽性者ネットワーク・ジャンププラス創立者の長谷川博史氏、トランスジェンダー活動家の杉山文野氏、日本における性別越境(トランスジェンダー)の社会・文化史研究家の三橋順子氏などが登場し、日本のLGBTQをめぐる諸状況について語っていたが、固い内容ながら、劇映画製作の経験もある監督の映像には、ドキュメンタリー映画らしからぬ透明感と叙情性が漂っていた。
トークゲストには美術家で映画批評家、ドラァグクイーンなどとして、ジャンル横断的に活躍し、本映画にも登場するヴィヴィアン佐藤氏をお招きし、プロデューサーの飯田ひろみ(HIROMEDIA8)氏も交えて、監督との出会いや「アライ」*の考え方、映画への思いなどを語っていただいた。
コルベインズ監督からは日本のゲイ・カルチャーに惹かれたきっかけや、東京レインボープライドでの撮影秘話などが披露され、日本ならではの反応について議論された。例えばドラァグクイーンの撮影時、高齢の女性から好意的な励ましをもらったそうだが、日本では、歌舞伎や大衆演劇などの伝統芸能に異性装が多く登場することから、社会においても、ドラァグクイーンや女装が受容されやすい一面がある。佐藤氏は自らの経験も踏まえて、結婚式などハレの場では、まるで縁起物のように歓迎されるが、一方で、根強く残る保守的な家族観から、家族・親戚内では徹底的に隠ぺいされることが多いと述べた。そして、他人の異性装者には好意的でも家族内には受け入れない日本社会には、特有の性的マイノリティーに対する二重性があると語った。
『クイアー・ジャパン プロジェクト』は今後行う、関西や東北、北海道、沖縄でのインタビューを加えて編集後、完成する予定だそうだ。完成した際には、国際文化会館での上映会を望む声も多数いただいた。
*ally(味方)が語源。LGBTの当事者ではない人が、性的マイノリティを理解し支援するという考え方、あるいはそうした立場の人々を指す言葉。
『クイアー・ジャパン プロジェクト』ウェブサイト: queerjapanmovie.com