どのようなイメージがこの国名から喚起されるだろうか?過去数世紀に渡り外界に自ら扉を閉ざしたその鎖国政策により、”オリエンタリズム”的言説の中で過度に単純化され現実味を欠いた一面的なイメージが構築されてきたヒマラヤの秘境ブータン。メディアによるその表象は神秘主義的なものやロマン主義的要素に彩られたもので、仏教僧の異国情緒に満ちた国とか山々に囲まれた君主国とかのイメージなどであるが、果たして現実はどうなのだろうか? 世界で最も多い人口をもつ国、中国及びインドに挟まれたヒマラヤ山脈の王国ブータンは一人あたりの国民所得はわずか760ドルでLLDC(最貧国)に分類され、人口も70万人の小国と見なされているが、国土や国民総生産のその限られた規模にも関わらず、ブータンはここ数年脚光を浴びており、開発の在り方を考える上で新しいモデルを提供しうる国として浮上してきている。それは、ブータンの国策として推進されているグロス・ナショナル・ハッピネス(GNH)に起因するものである。GNHの中核となっているその概念的枠組みは、社会経済的発展、多様な文化の尊重、精神的・心の豊かさのバランスの取れた追求である。加速化するグローバル化や社会の同質化のとどまることを知らない勢いに対抗し、他と異なることでその波に飲み込まれぬよう、その独自の文化的アイデンティティを保持している。 今回の講演では、ブータンの国策として、また、人間開発のオルタナティブとしてのグロス・ナショナル・ハッピネス(GNH)の基本概念について論じていただき、20世紀の近代化を通じて失ってしまったもの、人間にとって真の幸福とはなにかを再考する一助としたい。
- 日程: 2004年11月11日(木) 18:00-20:00 (入場無料、逐次通訳あり)
- 会場: 早稲田大学7号館小野記念講堂 (〒169-0051 東京都新宿区西早稲田 1-6-1)
- 講師: キンレイ・ドルジ、Kuensel 新聞社専務理事/編集長
- 主催: 早稲田大学COE-CAS「アジアの社会開発」研究会
- 協力: 独立行政法人国際交流基金、公益財団法人国際文化会館
- お申し込み締め切り: 4月10日(火)
- 問合せ: 早稲田大学政治経済学部、西川研究室
TEL: 03-3203-4141 FAX: 03-3203-9816