【ALFP】 パネル ディスカッション「東洋の女性-オリエンタリズムの創る神話を超えて」 (2005年9月26日)

2005年9月26日に、国際文化会館とジャパン・ソサエティの共催(協力:国際交流基金)で表題のパネル・ディスカッションが開催されました。このパネルは、国際文化会館が主催または協力する2つのフェローシップ・プログラムに参加したフェローを招いて行われたもので、ALFPからは2000年度フェローのウルワシー・ブターリア氏がパネリストとして参加しました。

パネルでは、初めに米ジャーナリストのシェリダン・プラッソ氏(2003年度日米メディア・フェローズ・プログラムで来日)が、今年刊行した著書 “The Asian Mystique: Dragon Ladies, Geisha Girls, & Our Fantasies of the Exotic Orient” (Public Affairs, 2005) の内容に基づいて講演。ハリウッド映画に代表される欧米のメディアによって誇張され、定着した、「服従的・従順・性に奔放」あるいは「猛女」といった二極化されたアジア女性のイメージは誤ったステレオタイプであるとし、こうしたステレオタイプが生まれた歴史・社会背景を明らかにすると同時に、人々を、国籍などによって括るのではなく、一人一人の人間として見ることが重要だと訴えた。 
続いて登場したブターリア氏は、プラッソ氏が語るアジア(東アジア・東南アジア)と、ブターリア氏が属するアジア(南アジア)との間には大きな違いがあり、果たして(アジア女性、などといった)「地域アイデンティティ」なるものは存在するのかと疑問を投げかけた。またブターリア氏は、「ステレオタイプ」によって、人々を「箱詰め」にし、レッテルを貼ることによって我々が犯している「暴力」についても言及。他者から向けられるステレオタイプも、自己に向けるステレオタイプ(すなわちアイデンティティ)も、我々から力を奪うものになりうるとし、表象される側の人間も、その「ステレオタイプ」が自分たちにとって何を意味するのか考え、時にはそのステレオタイプを打ち破るために立ち上がらなくてはならないと述べた。二人の討論の後に行われた質疑応答では、聴衆から多くの批評的な意見・質問が出された。

(左から)竹中千春氏(モデレーター;明治学院大学教授)、ブターリア氏、シェリダン・プラッソ氏(パネリスト;ジャーナリスト)