「アジア・リーダーシップ・フェロー・プログラム(ALFP)」は、国際文化会館と国際交流基金との共同事業として1996年度より実施してきたもので、アジア諸国・地域の様々な分野において際立ったリーダーシップを発揮している専門家を選抜し、フェローとしてこれまで140名近くの方を招聘してきました。フェロー5~8名全員が国際文化会館に滞在し、フェロー間で意見交換を行うワークショップや、現代社会が抱える問題とそれに対する取組みの様子を視察するフィールド・トリップ、専門家を招いて議論するセミナー、リトリートなどの知的共同作業を行いました。
本プログラムの最大の特徴は、アジアの知的リーダーたるフェローたちが対話や共通の体験をもつことを通じ、個人的な交友関係を培うとともに、それぞれの問題意識を共有し、価値観を分かち合うことにより、よりよい市民社会の実現へ向けて専門分野を越えた人的ネットワークを形成して、発言力、影響力を増していくことを目指しているところにあります。
ALFPが目指すもの
ALFPは、対話を通じて、アジア各地域のリーダーとして活動するパブリック・インテレクチュアルが情報や価値観を共有することにより信頼関係を醸成し、国境を越えたよりよい市民社会の実現に向けて、専門分野を超えた人的ネットワークの形成と緊密なネットワークの構築をめざしています。
- ALFPはセオリー(知識)だけでなく、実践(現実)を共有するユニークな機会
- アジア知識人の信頼醸成、ネットワーク拡大、そしてアジア市民社会の共通基盤をつくる
- メインストリームとは異なるオルターナティブな声をきく力を醸成し、多様な価値をもつ人々のプラットフォームをつくる
- 緊急、重大な課題がアジアで発生した場合に市民社会の意見が集う場
- ALFPのネットワークを通じて、各地域間の交流が活性化し、新しいアジア創造のためのプラットフォームとなることをめざしている
ALFPが考える「パブリック・インテレクチュアル」とは?
ALFPが中心に置いているパブリック・インテレクチュアルの定義は「パブリック」の意味が変化すれば変化するものです。ALFPに参加することによって、この「パブリック」について思想を重ね、このグローバル社会で知識人が何をすべきか、考えるきっかけになります。
- 市民社会に深く根ざした活動をしている、あるいはしようとしている人
- 課題を共有する人々の中で、リーダーシップを発揮し、つながりを自らつくっている人
- 自分の専門分野を超えた活動を展開できる人
- 理論にとどまらず、社会問題に積極的に対応するための活動をしている人
- 少数派の声を代弁し、多数派との対話を可能にする人
- 現状に対する異なる解決法を考えるよう、人に働きかける力がある人
- 異なる視点に聞く耳をもつことを重視し、相互理解や信頼醸成を促すことにつとめる人
- 文化、分野、地政学的な背景を超えて、市民社会に根差し、貢献している人
なぜALFPが必要なのか?
世界の人口の60%以上が、異なる社会規範や経済システム、文化、宗教、民族が共存するアジアと呼ばれている地域に住んでいます。豊かな多様性は同時に課題の多様性も意味します。たとえば現在アジアには、社会経済的格差や環境悪化、人種・宗教・文化対立などの、人間生活や尊厳に対する暴力が存在します。
ソーシャル・メディアの発展を含むローバル化は、国境を超えた連帯を促す力を持っています。しかし一方で、アジアに対する、またアジアの域内にはまだ多くの固定観念が存在し、それが不信、不寛容、無知、無関心をうみだす原因となっています。地域の課題解決を、国家や市場だけに頼ることができないことは、もはや明らかです。
問題は山積みですが、市民社会の視点から理解し、取り組むことができる、またそうすべき課題は多いはずです。ALFPは相互の文化的背景や価値観を尊重し、課題解決に向けて効果的な行動を起こす力のある人々のつながりに、これらの課題を突破する鍵があると信じています。
地球の将来に対して同様の危機感を抱き、世界とつながりながら、アジア地域に公正な市民社会を構築する必要性を痛感しているパブリック・インテレクチュアルの対話や交流を拡大すること、その必要性はますます高まっているのです。
アジアには、長きにわたり解決をみない、また新たに浮上しつつある地域の課題を総合的な観点から取り上げ、協議する様々な場が存在します。ALFPは、各所で活躍するパブリック・インテレクチュアルにとって触媒的な場となること、そして彼らとともに、在来のメディアや新たなコミュニケーション手段を駆使し、より大きな公共圏につながっていくことを目指しています。