2006年国際文化会館のリニューアル・オープンを記念して企画された国際会議に提出された論考を収めた論文集。相互依存性、多国籍企業の形成またはグローバルとナショナル(ローカル)との対峙などの視点のみからグローバリゼーションを把える通念に疑問を投げかけながら、その内在する二面性としての矛盾・逆説を政治・文化的側面から照射し論じています。国境という垣根が低くなったように感じられる一方で、「格差」・不均衡の拡大やアイデンティティ・ポリティックスの噴出に例証されるように、従来の境界とは違う、新たな境界線で寸断された世界が台頭しつつある状況をどのように考えるべきだろうか。経済のグローバル化とアイデンティティの根拠としての文化の再発見という、ベクトルの異なる現象(外への拡散と内への収斂)が同時進展する逆説的な状況をどう捉えるべきだろうか。ボーダーレス時代におけるこうした領域を超えた重層的課題に対し、パブリック(公共性)と関連させた形で、知識人の役割、メディア/ジャーナリズムのあり方、学術・文化交流の方向性や国境・分野を超えたネットワーキングの意義を、アジア、米国、オーストラリアの傑出した論客(研究者、ジャーナリスト、NPO/NGOのオフィサー)が検証し、問題提起しています。
論文寄稿者:
クリフォード・チャニン、「レガシー・プロジェクト」代表
ジェイムス・ファローズ、『ジ・アトランティック・マンスリー』記者
G・ジョン・アイケンベリー、プリンストン大学教授
イグナス・クレデン、インドネシア民主主義普及協会会長
メアリー・B・マクドネル、米国社会科学研究評議会 (SSRC) 専務理事
マズナ・モハマッド、シンガポール国立大学客員シニア・フェロー
テッサ・モリス=スズキ、オーストラリア国立大学太平洋アジア研究所教授
パラグミ・サイナート、インド・『ヒンドゥー』紙農村問題専門エディター
サスキア・サッセン、コロンビア大学教授、LSE客員教授
——東京大学教授 姜尚中