【アイハウス・プレス】 Maruyama Masao and the Fate of Liberalism in Twentieth-Century Japan

Maruyama Masao and the Fate of Liberalism in Twentieth-Century Japan By Karube Tadashi (Professor, University of Tokyo)
苅部 直 著(David Noble訳)

222ページ/2008年/ハードカバー
ISBN 978-4-903452-10-4
原著『丸山眞男 ― リベラリストの肖像』(岩波書店、2006年)
定価 2,619円/優待価格* 1,832円(税込)
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丸山眞男(1914―96)は、20世紀日本の知識人の典型と見なされてきた。丸山の学術的成果は思想史や政治学の分野に多大な影響を及ぼし、さらに戦後の主要な論壇誌紙への広範な執筆や論評を通じて、リベラリズムや民主主義の率直な主唱者として広く知られるようになった。

この評伝風思想案内において、苅部直は丸山の戦前から戦争期にかけての子ども時代から青年期への歩みをたどり――民主主義の理想への傾倒を深めるとともに、個人の自立と誠実さへの希求への動機づけとなったいくつもの核となる体験を活き活きと描き出している。これは、大衆社会に内在する問題への丸山の戦後の取り組みへの姿勢を示し、日本の伝統をその病理学面から分析し再解釈するためにそこに内在する現代性への道を探りつづけた丸山の思考の透視図である。

丸山の人生と思想の重要性を近代日本の経験に照らして論証するものの、本書は偉大な人物の理想的な肖像を描いたものではない。丸山の政治的行動における二律背反は、ネオ右翼や過激な学生左翼の双方からの攻撃にさらされ、孤独のうちに健康を損ない、東京大学の教授職を含む公的人生から引退した晩年の丸山の悲哀をも描き出している。

著者は本書序章のなかで「丸山が時代の変転の中で、さまざまな問題を見いだし、それに応答してきた姿を動的にたどることが、いま、その作品から何かを読みとろうとする際に、実り豊かなやりかたなのではないか。丸山は、生涯を通じて、時々の「現代」における問題を考え、ひとつひとつ論じてきた。大事なのはその思考の運動であり、それこそが、丸山の思想を生きたものにしている。」と述べている。著者の言葉をかみしめながら本書を読み進むと、「現代の日本で、リベラリズムは可能なのか?」という著者の問いかけが、執拗低音のように行間から響いてくる。