戦後の米国を代表する東アジア研究の第一人者であるエズラ・ヴォーゲル・ハーバード大学名誉教授が昨年12月にご逝去されました。
同教授は、国際文化会館の会員として長年にわたり当会館の活動を支援くださり、2009年の「鄧小平中国副総理の歴史的訪日(1978)と日中関係の未来」など、当会館主催のプログラムにも数多く講師としてご登壇いただきました。
このたび図書室では、エズラ・ヴォーゲル教授の著作を紹介するささやかな展示を開催し、改めて哀悼の意を表したいと思います。
講演の中では折に触れて、国際社会における国際文化会館の役割への重要性と期待について述べられ、2012年の『60周年記念プログラム:連続シンポジウム「世界での日本の立ち位置」』の中では下記の言葉を遺されました。
「…目先の政治的なムードではなく、長期的な戦略にかかわる問題に重点的に取り組む人材の育成面でも中国に後れを取っています。こうした状況にあっては、日本のメディアが、根っこにある長期的な問題に取り組まずに、ムードや意識の変化ばかりを追いかける記事を載せているというのはよく理解できることです。
既存の大国と新興大国が交渉せざるを得ないという新しいグローバルな現実を見据えて、日米両国ともに新興大国に関する理解を大いに深める必要があります。戦略的な議論で重要な役割を果たすことができるのは、政府系シンクタンクです。しかし、日本においては、国際文化会館ほど、日本と新興大国が幅広い理解を深めていく上で大きな役割を果たせる組織は思い当たりません。これまで日米関係に全力を注いできた人は、日本、アメリカ、その他の国々の間のより一層の対話を促進する取り組みに加わるべきではないでしょうか。」(※)
また、ご逝去される直前までも各方面で尽力され、特に日中関係においては常に双方の友人としての立場を大切にしながら周囲に託されてきたお言葉、寛容さと思慮深さに包まれた笑顔は今もわたしたちの心に強く刻まれています。
今回の展示にあたり、会員として当会館を支援してくださっているリチャード・E・ダイク氏よりヴォーゲル教授の著作を多数ご寄贈いただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。
※下記所蔵資料、p.85より引用
『日本の立ち位置を考える : 連続シンポジウム』(明石康編)
岩波書店, 2013.9
請求記号[国際文化会館出版物]
出版社による紹介:
https://www.iwanami.co.jp/book/b261947.html
- 展示期間: 2021年5月13日(木)~6月30日(水)
- 展示場所: 国際文化会館図書室
- 展示資料: エズラ・ヴォーゲル氏の著作、関連資料