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- 講師: 行天 豊雄 (公益財団法人国際通貨研究所 理事長)
- 日時: 2013年11月30日(土) 1:30~3:00 pm
- 会場: 国際文化会館 講堂
- 用語: 日本語(通訳なし)
- 会費: 無料 (要予約)
かつて大蔵省財務官としてバブル経済下の金融行政でも手腕を発揮し、日本を代表する「通貨マフィア」の異名をとった行天氏に、これからの世界、とりわけアジアがどこに向かうのか。そしてその中での日本と私たちの役割について、次世代を担うリーダーたちにお話しいただきます。
1955年東京大学経済学部卒業後、大蔵省(当時)に入省。プリンストン大学留学。国際通貨基金、アジア開発銀行に出向、国際金融局長、財務官などを歴任。1989年退官後、ハーバード大学、プリンストン大学、サン・ガレン大学(スイス)の客員教授を経て、1992年から1996年まで東京銀行会長。1995年12月に国際通貨研究所初代理事長となる。1998年には小渕恵三首相(当時)の助言役として内閣特別顧問をつとめた。2008年11月より2010年 3月まで内閣官房参与(総理特使)。2009年9月より財務省特別顧問。 著書に、『富の興亡―円とドルの歴史』(ポール・ボルカー氏との共著、東洋経済新報社、1992年)、『円はどこへ行くのか―体験的為替論』(講談社、 1996年)など。
レポート
天安門事件、ベルリンの壁崩壊、冷戦の終結などが起きた1980年後半以降、世界は大きく変容した。行天氏はその変化について、「グローバリゼーション」「金融と情報による世界経済の制覇」「パワーシフト」という3つのキーワードをもとに説明した。さらに、その変化がもたらした影響について、グローバル化により経済危機が急速かつ広範に世界に伝播するようになり、国や企業が外部のリスクを絶えず意識して行動しなければならなくなったこと、情報革命によってガバナンス(統治)の方法がかつての「上層部による情報の独占」から、「透明性」や「説明責任」に変化したこと、さらに社会構造の変化に伴う格差の拡大により、社会不安のみならず民主主義体制や市場主義への反発や疑念が広がりつつあること、などを指摘した。
では、こうした変化の潮流の中で、日本という国、あるいは企業、個人は一体どう対応していくべきか。行天氏は、まず国の課題として、経済力・軍事力・外交力・技術力・文化力、そして国として持っている理念などをすべて含めた「総合的な国の力」をいかにバランスよく維持・拡大していくか、さらに世界、特にアジアの中で、日本がどのような役割を果たし、地位を占めようとするのか、という地政学的なポジショニングの重要性を挙げた。企業については、事業活動が世界各地に広がる時代だからこそ、自分の会社は一体どの国に属し、どこのマーケットで何を売っていくのか、といった企業のアイデンティティーをきちんと持つことが肝要だとした。最後に、一個人が世界のさまざまな人たちと関わりを持つうえで必要な気構えについて触れ、まずは「communicate(=意思を通じ合う、話をする)に対する熱意を持つこと」、そして「他の国のことを知っているよりも、まずは自分の国のこと、会社のこと、あるいは自分自身のことを知ることが大切である」と結んだ。