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- 講師: イェスパー・コール (JPモルガン証券株式会社 マネジングディレクター、株式調査部長)
- 日時: 2014年11月15日(土) 1:30~3:00 pm
- 会場: 国際文化会館 講堂
- 用語: 日本語(通訳なし)
- 会費: 無料 (要予約)
最後の「日本オプティミスト」として知られ、長年にわたり日本のリーダーの決断とその動向を目の当たりにしてきたコール氏に、日本が迎えるであろう新たな隆盛期についてお話しいただきます。また、経済成長と人口動態の関係、それに伴う課題に触れていただきます。
コール氏は1986年に来日して以来、一貫して日本経済の調査に携わってきた。来日後3年間にわたって国会議員に助言を与えたほか、JPモルガン証券調査部長、メリルリンチ日本証券チーフエコノミストを10年間、タイガー・マネジメントでマネジングディレクターを2年間務め、2009年12月にマネジングディレクターとしてJPモルガン証券に復帰した。過去約20年間、日本におけるトップレベルのストラテジスト・エコノミストとしての地位を保ち、その卓越した洞察力を買われて、数多くの政府諮問委員を務めてきた。また、フジテレビ、日経CNBC、ワールドビジネスサテライト、CNNなど国内外の報道番組にコメンテーターとして出演。経済同友会の数少ない外国人会員の一人でもある。日本語の著書に『日本経済これから黄金期へ』(ダイヤモンド社、2000年)、『平成デフレの終焉』(共著:上坂郁、有楽出版社、2003年)。レスター・B・ピアソン・カレッジ・オブ・ザ・パシフィックを卒業後、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院にて国際経済学修士号を取得したほか、東京大学と京都大学でリサーチフェローを務めた。
レポート
日本経済の調査に長年従事するエコノミストのイェスパー・コール氏が、経済成長と人口動態の関係、及びそれに伴う課題などにも触れながら、今後日本は「新たな黄金期」を迎えるという独自の見解を述べた。
コール氏は、日本には再び黄金期を迎えるための知的財産という原動力があると主張する。「失われた10年・20年」と呼ばれる80・90年代の日本では、民間企業による技術開発への前向き投資が上昇していた。エコノミストから見て、技術投資・技術開発は知的財産の根本であり、明るい未来をつくるためには知的財産、特許、イノベーションが必要とされる。その点、日本は現在でも技術開発への投資を造船など古い産業まで幅広く積極的に行っているため、特許が一分野に集中することがないうえ、多くの製造業が既にグローバルプレイヤーになっていることを指摘し、この投資のおかげで日本には強い基盤ができていると高く評価した。
次に、30年前と比べてこれから迎える「新たな黄金期」はどう異なるのかという点に触れ、2年以上続いた総理が少ない日本で、今後4~5年は続くだろうと予測される安倍政権に見られる一貫性を挙げ、アベノミクスが経済政策の実効性を追求するだけではなく、調整しながら現実主義的に物事を進める点を評価した。また日中関係の変化、特に中国との経済的な相互依存や尖閣問題を挙げ、日本は財政や防衛に関してより積極的に議論し、決定力を強めていく必要があると指摘し、そうした議論の流動性、議論の摩擦は次の黄金期の一つの基盤になるという見解を述べた。
またさらに、ここ三年間で貿易が黒字から赤字に転じ、日本が債権国から債務国になった点に言及するも、氏はそれと同時に失業率が低下したことに着目し、海外設備投資を推進しても、そこにトレードオフがあれば日本経済へのマイナスにはならないと主張した。現在の日本企業の多くは、高利回りや確固とした成長戦略なしには資金調達ができないが、このような状況は、逆に日本企業の収益性・マネジメントの見直しを促進させ、日本経済全体の効率性を上げる原動力になると力説した。
日本の少子高齢化は、需給関係や雇用関係にも変化を及ぼし、将来は正社員が増加し、労働賃金が上がり、新たな中間所得者層を得ることになる。そして消費者の購買力が上がった時、企業は女性の雇用増加、社員教育の改善に取り組み生産性を上げる必要があると氏は主張する。最後に、老後も資産を多く持つ今の日本人の裕福さを指摘し、今後はハイエンドな老人ホームなどのサービス産業や、ヘルスケア、農業、エネルギー、ソフトウェア、教育産業が成長するだろうと、日本経済のさらなる発展の可能性を強調して講演を締めくくった。