【書籍展示】『夢のホテルのつくりかた』稲葉なおと著

図書室の入り口にて、新着図書『夢のホテルのつくりかた』を紹介しています。

日本のホテル建築の世界は、外客を迎えるという形で国際関係においてもその役割を果たしながら明治、大正、昭和とその歴史と系譜が紡がれてきました。

空間と時間、費用、人材を多大に要して完成されてゆく建築の世界において、事業主・建築家・施工者・営繕技師・ホテルマン・顧客などそれぞれの立場の異なる中に、奇縁は編まれながら連綿と受け継がれていきます。その複雑に織り出された壮大な系譜が著者の丁寧な取材と調査によって本書一冊の物語全体を通し、立体的に感じられるものになっています。

また、事業と建築に心血を注いだ人たちの溌剌とした想いとそのやりとりを感じられるような風情あふれる建築細部の美しい写真が著者自身によって撮影され、各所に散りばめられているのも本書の魅力のひとつで、それぞれのホテルを訪ねてみたくなる思いに駆られます。

本書は、日本の近代の高名な建築家たちが手掛けた日本各地のホテルを多角的な観点から紹介しています。「日米の友情が育んだ国際文化交流のための『ハウス』」というフレーズで国際文化会館も紹介されています。
建築界の系譜の中に大きな足跡を残し、当会館の共同設計に携わった前川國男、坂倉準三、吉村順三の3名の経歴とその関係性や、グロピウス、コルビュジエ、レーモンド、ヴォーリズと会館との物語はとても読み応えがあり、読後には私たちの思いもよらなかった建築の表情、更には彼らの建築がそれぞれの土地で静かに佇ずむ日本の新たな風情を感じることができることでしょう。

夢のホテルのつくりかた / 稲葉なおと著
エクスナレッジ, 2020.12
[日本語棚||500]
出版社による紹介:
https://www.xknowledge.co.jp/book/9784767828114

 

  • 展示期間: 2021年2月1日(月)~3月31日(水)
  • 展示場所: 国際文化会館 図書室