創立70周年のごあいさつ
いつも国際文化会館をご愛顧、ご支援頂き誠に有難うございます。
70年前の1952年8月27日、国際文化会館は誕生しました。
同年11月、当時の総理大臣吉田茂が首相官邸で開催した会館設立資金集めのための茶話会は、今でも「戦後最大のファンドレイズ決起会」と言い伝えられています。初代理事長である樺山愛輔の会館創設にかける熱い思いと、募金委員長の日本銀行一万田総裁の強いリーダーシップのもと、政財界から文化界まで、全国の7000社を超える法人と5000人を超える方々から多額のご寄付をいただきました。ロックフェラー財団からの助成金とあわせ、創立から3年後の1955年、鳥居坂の地に本館が建立されました。
日本の近代建築を代表する3人の建築家、前川國男、坂倉準三、吉村順三によって共同設計されたこの建物は、今は登録有形文化財となっており、名勝である庭園と共に70年近く、多くの皆様に愛され、歴史を紡いで参りました。
会館設立当時の国際情勢は、長く悲惨な大戦は終わったものの、2年前には朝鮮戦争が勃発し、冷戦が本格化していました。日本の国際的立ち位置を定める上でも大切な状況であり、国際文化会館に期待された役割は大きなものでした。そのような中、会館の初代専務理事となる松本重治と、戦前から親交を深めていたジョン・D・ロックフェラー三世をはじめ、設立に関わった多くの先代達の熱い志が、日本の国際社会復帰を後押しし、半世紀以上にわたりアジア太平洋地域で続いた平和と繁栄に寄与してきたことは、私たちにとって大きな誇りとなっています。
今世界を俯瞰すると、再び国際秩序が不安定化し、分断が深化する中で、国家間の戦争の回避、持続的な平和の構築への尽力が改めて求められていると痛感いたします。 今年7月に国際文化会館は、日本を代表するシンクタンクである一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブと合併致しました。この合併により、国際文化会館が、設立当初から力を注いできた政策研究領域が、大幅に強化され、時代の要請に応えられる土台ができました。
大きな社会インパクトを出すプログラム部門、志を同じくする会員組織、そして世界の要人を招聘できる館(やかた)の3つの融合体として、日本はもとよりアジア太平洋地域を代表する知の拠点として、「多様な世界との知的対話、政策研究、文化交流を促進し、自由で、 開かれた、持続可能な未来をつくることに貢献する。」というミッションの実現に邁進してまいります。 この度の70周年を機に、設立当時の偉大なる先人達の志に改めて思いを馳せると同時に、70年を経てもなお、志を同じくする会員の皆様と歴史の節目を迎えることができることにめぐり合わせを感じております。皆様の温かい激励とご支援に心から感謝すると共に、引き続き会館を末永くお見守り賜れば幸いです。